日本語あいさつレベルのアメリカ人をスカウト採用——京都の建設F社が地元人材を先に押さえた外国人採用成功事例

この記事のサマリー

  • 企業概要:建設業(左官・塗装工事)/京都府京都市
  • 課題:職人の担い手不足。日本語能力を基準にすると候補者が絞られすぎ、通勤圏内の人材が確保できない
  • 成果:応募62名・29カ国を集め、日本語が「あいさつレベル」のアメリカ出身30代男性を正社員候補として採用。スカウトで通勤圏内の人材を先に押さえたことが決め手。月給30万円以上

F社の事業概要

F社は京都府京都市を拠点とする建設会社で、左官工事および塗装工事を手がけています。手を動かして技術を身につけていく職人の世界であり、未経験からでも育成できる体制を持っていることが特徴です。

今回は「未経験OK・月給30万円以上可」という条件で、左官・塗装工事スタッフを正社員求人として募集しました。

導入前の課題

職人の担い手が集まらない

建設業、とりわけ左官や塗装といった職人職は、日本人の若年層からの応募が年々減少しています。技術を継承していくためには新しい担い手が必要ですが、通常の求人媒体では母集団そのものが形成できない状況が続いていました。

「日本語N○以上」で候補者を足切りしてしまう

外国人採用を検討する際、多くの企業が「日本語能力試験N3以上」などの条件を設定します。しかし現場作業では会話力よりも段取り力や現場対応力が効くケースが多く、日本語レベルを基準にすることで、本来活躍できる人材を取りこぼしている可能性がありました。

通勤圏内に住んでいる人材が希少

建設現場は毎日の通勤が前提です。全国から応募が集まっても、引っ越しを伴う採用は本人の負担が大きく、定着リスクも高まります。「通勤圏に住んでいる」という条件が、実質的に最も厳しいフィルターになっていました。

ヨロワーク導入の決め手

ヨロワークには246の国と地域から40万人以上が登録しており、全国47都道府県の4,000社以上で導入されています。今回の求人にも29カ国から62名の応募が集まり、建設・職人職でも十分な母集団を形成できることが実証されました。

さらに重要だったのが在留資格の構成です。ヨロワーク登録者の約70%が就労制限のない在留資格、または職種が合致すれば就労可能な在留資格を保有しています。実際、今回の応募62名のうち永住者・定住者・配偶者ビザの保有者が18名(29.0%)を占めていました。就労時間や職種の制限なくフルタイムで働ける層がここまで厚いことは、長期定着を前提とする建設業にとって大きな意味を持ちます。

また、応募を待つだけでなく企業側からアプローチできるスカウト機能(平均応募率3.2%)を活用できる点も決め手となりました。登録者の約70%が20〜30代で、75%が転居に前向きというデータもありますが、今回は逆に「すでに通勤圏に住んでいる人」をスカウトで先に押さえる戦略が奏功しました。

導入後の成果

求人には29カ国・62名の応募が集まりましたが、そのうち京都府内の応募者はわずか15名(24%)。残り76%は府外からの応募でした。F社はこの希少な「地元・通勤圏の人材」に対してスカウトを送り、先に押さえたことで採用に至っています。

採用者のプロフィール

  • 国籍:アメリカ合衆国
  • 年齢・性別:37歳・男性
  • 在留資格:日本人の配偶者等(就労制限なし)
  • 日本語能力:あいさつレベル(学習継続中)
  • 居住地:京都府京都市(通勤圏内・引っ越し不可)
  • 経歴:製造・オペレーション管理8年。うち3年は12名超のチームリード。在庫システム管理、リアルタイムのリソース最適化、部門間調整が得意
  • 給与条件:月給30万円以上可
  • 応募経路:スカウト応募(応募日 2026年7月25日)
  • 入社予定日:2026年10月12日(アルバイト雇用からスタート)

決め手になったのは日本語力ではなく、「12名のチームを回してきた段取り力」でした。製造現場で8年、うち3年はオペレーションリードとして12名以上のチームを牽引してきた実績があり、在庫システムの入力からリソース最適化、部門間調整までロジカルに捌けるタイプ。手を動かして覚える左官・塗装の仕事とは相性が良いと判断されました。

在留資格が「日本人の配偶者等」であることも重要なポイントです。就労時間・職種の制限がなくフルタイムで稼働でき、在留更新も安定するため、長期定着を前提にした採用と噛み合いました。日本語はまだあいさつレベルですが、京都在住で実践的な日本語習得に継続して取り組んでいます。

担当者からのメッセージ

「これまで外国人採用というと『日本語がどこまで通じるか』ばかりを気にしていました。今回、日本語があいさつレベルの方の内定承諾に踏み切れたのは、面接で現場を回してきた経験の話を聞けたからです。左官も塗装も手を動かして覚える仕事なので、会話力より段取り力のほうが効く。それがはっきり分かりました。もうひとつ意外だったのが、62名も応募があったのに京都府内の方は15名しかいなかったことです。地元で通える人はそれだけ希少だということなので、待つのではなくスカウトで先に声をかけたのが正解でした。在留資格も就労制限がない方なので、腰を据えて技術を継承していってもらえると期待しています。」

まとめ:この事例から学べる3つのポイント

  1. 職人職では「日本語レベル」より「現場の段取り力」で見る
    日本語があいさつレベルでも内定承諾に至りました。左官・塗装のように手を動かす仕事では、会話力よりチームを回してきた経験のほうが評価軸として有効です。「日本語N○以上」の足切りを外すだけで、候補者の幅は大きく広がります。
  2. 「就労制限なし」の在留資格は長期定着と相性が良い
    採用者の在留資格は「日本人の配偶者等」で、就労時間・職種の制限がありません。フルタイム稼働でき在留更新も安定するため、技術継承のように年単位で育てる採用に向いています。建設系の提案では、在留資格の切り口が効きます。
  3. 「地元・通勤圏の人材」はスカウトで先に押さえる
    応募62名のうち京都府内は15名(24%)のみ。通勤圏に住む人材は想像以上に希少です。応募を待つのではなく、条件に合う地元人材へスカウトで先手を打つことが、建設業のように通勤前提の職種では決定的な差になります。